2025年「VUCE」を深堀解説|中小企業が生き残るために必要な事

VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、現代社会が置かれている、変化が激しく予測困難な状況を指します。
VUCAの時代を生き抜くためには、企業は従来の考え方ややり方から脱却し、新たな力を身につける必要があります。
本記事では、VUCA時代の企業が生き残るために必要な7つの力と、2025年以降のVUCAがどのように変化していくかについて解説します。
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ー目次ー
1. VUCAとは?
VUCAとは、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った言葉で、変化が激しく、予測が困難な状況を指します。
VUCAという言葉は1990年代に米国の軍隊で、複雑で不確実な戦況を表現するために使用され始めたと言われています。その後、ビジネス界にも広がり、現代社会における変化の激しさを象徴する言葉として定着しました。
Volatility「変動」
Volatility「変動」は、 状況が頻繁に変化し、安定しない状態を指します。現代社会においては以下のような要素があります。
急速な技術革新
近年はインターネットやスマートフォンなどのIoTの普及、人工知能の進化が目まぐるしく、新技術も次々と登場しています。
今後もブロックチェーンやVR/ARなどの新技術を活用し、エンターテイメントだけではなく教育や医療などの様々な分野で、仮想通貨や仮想現実や拡張現実といった技術革新が広がっていくでしょう。
社会的価値観の変化
インターネットの普及により、社会的価値観にも大きな変化が生じました。グローバル化が進んだ結果、異なる文化や価値観を持つ人々との文化的多様性や、LGBTQ+に対する理解と受け入れが求められるジェンダーの多様化、時間や場所にとらわれない働き方の多様化が常識となりました。
また、環境問題が深刻化しており、企業の再生可能エネルギーの利用や脱炭素への取り組みもシビアに求められつつある時代に入っています。
Uncertainty「不確実性」
Uncertainty「不確実性」は、未来が不確かで、何が起こるかわからない状態を指します。現代社会においては以下のような要素があります。
パンデミックや自然災害
パンデミックは、特定の感染症が世界規模で流行することで、2020年より始まったコロナウィルスによる世界経済の停滞、サプライチェーンの混乱、失業率の上昇など、経済活動全体に大きな打撃は記憶に新しいでしょう。
コロナ禍を経験した社会は、外出自粛、リモートワークの普及、オンライン授業の導入など、人々の生活様式が一変するきっかけにもなりました。
台風・洪水などの自然災害は、温暖化による地球環境の変化で頻発するようになった他、遠くない未来に「南海トラフ」や「首都直下型地震」などの大地震の発生が高い確率で発生すると予測され、防災対策が急務とされています。
Complexity「複雑性」
Complexity「複雑性」は、様々な要素が複雑に絡み合い、全体像を把握するのが難しい状態を指します。現代社会においては以下のような要素があります。
グローバル化の進歩とその反動
グローバル化は経済成長をもたらしますが、一方で経済格差を拡大させる可能性もあり、先進国と発展途上国の間、あるいは国内でも地域間の経済格差が広がるという反動も考えられます。
グローバル化の反動として、自国の産業保護を目的とした関税や非関税障壁の導入、外国からの移民制限を進めている国も見受けられ、グローバル化による様々な国の思惑が複雑に交差する状態です。
Ambiguity「曖昧性」
Ambiguity「曖昧性」は、情報が不足していたり、解釈が複数存在したりして、何が正しいのか判断しにくい状態を指します。現代社会においては以下のような要素があります。
情報過多とデマの拡散
現代社会では、インターネットの普及により情報が爆発的に増え、情報過多の状況となっています。しかし、その一方で、デマやフェイクニュースが拡散され、何が真実なのかを判断することが難しくなっています。
ニュースサイト、SNS、ブログなどの多様な情報源があり、情報が断片化され全体像を把握しづらいことや、AIなどで簡単に、本物と見分けのつかない画像を制作することが出来るようになり、情報の真偽を検証するための高いリテラシーが求められています。誰でも簡単に情報発信、拡散ができるため、デマやフェイクニュースを見抜く力が重要です。
2. 企業がVUCAの時代を生き抜く為の力7つ
VUCAの時代は、変動が激しく、不確実性が高く、複雑で、曖昧な状況が常態化しています。このような状況下で、企業は従来の考え方ややり方では生き残ることが難しくなってきています。VUCAの時代を生き抜くためには、企業は新たな力が必要となります。
① 柔軟性と適応力
変化を恐れず、新しい状況に柔軟に対応できる力が求められます。
- アジャイルな組織づくり: 組織構造を固定化せず、変化に対応できる柔軟な組織体制を構築することが重要です。
- 実験と学習の文化: 新しいアイデアを試し、失敗から学び、改善を繰り返す文化を醸成することが重要です。
- デジタル化への対応: デジタル技術を積極的に導入し、業務効率化や新たなビジネスモデルの創出を図ることが重要です。
② 革新力
既存のビジネスモデルや製品・サービスに固執せず、常に新しい価値を創造していく力が求められます。
- オープンイノベーション: 社外のアイデアや技術を取り入れ、新たなイノベーションを生み出す。
- デザイン思考: ユーザー視点に立ち、課題解決型のイノベーションを創出する。
- R&D投資: 研究開発に積極的に投資し、新たな技術や製品を開発する。
③ 顧客中心主義
顧客のニーズを的確に捉え、迅速に変化に対応できる力が求められます。
- 顧客体験の向上: 顧客満足度を高めるための取り組みを強化する。
- パーソナライゼーション: 顧客一人ひとりのニーズに合わせた製品やサービスを提供する。
- 顧客の声への傾聴: 顧客の声を積極的に聞き、製品やサービスの改善に活かす。
④ データ活用とデジタル変革
- データ分析: 大量のデータを分析し、新たなビジネスチャンスを発見する。
- AIの活用: AIを活用して、業務の自動化や顧客へのパーソナライズを実現する。
- クラウドコンピューティング: クラウドを活用して、柔軟なITインフラを構築する。
⑤ サステナビリティと社会的責任
データに基づいた意思決定を行い、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革していく力が求められます。
環境問題や社会問題に積極的に取り組み、持続可能な社会の実現に貢献する力が求められます。
- ESG経営: 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の観点を重視した経営を行う。
- サプライチェーンの透明化: サプライチェーン全体のサステナビリティを確保する。
- 地域社会への貢献: 地域社会との連携を強化し、地域貢献活動を行う。
⑥ 強いリーダーシップ力
変化を牽引し、組織全体を一つの方向に導くことができるリーダーシップ力が求められます。
- ビジョンを示す: 組織の将来像を明確にし、従業員に共有する。
- 変化を促す: 組織文化を変革し、新しい働き方を推進する。
- 多様な人材を育成する: 組織全体の能力を向上させる。
⑦ 組織全体の学習力
変化に対応するためには、組織全体で学び、成長し続ける力が求められます。
- 継続的な学習: 従業員の学びを促進し、組織全体の知識レベルを向上させる。
- 失敗から学ぶ: 失敗を恐れず、そこから学び、改善していく文化を醸成する。
- 多様な視点の導入: 外部からの知見を取り入れ、組織の視野を広げる。
3. 想定しておきたい2025年以降のVUCA
2025年以降のVUCAは、技術革新、気候変動、そして地政学的な緊張が複雑に絡み合い、より予測困難な時代となることが予想されます。
以下に、汎用AI、量子コンピューティング、気候変動、新たな資源戦争という4つの主要な要素について考えてみました。
汎用AIの普及による職業の大規模再編
汎用AI(Artificial General Intelligence)は、人間のあらゆる知的作業をこなせる人工知能です。この技術が実用化されれば、多くの職業が自動化され、大規模な労働市場の再編が起きると予測されます。
- 影響を受ける職業: 事務職、製造業、サービス業など、幅広い分野の単純作業やルーティンワークが自動化される可能性があります。
- 新たな職業の創出: AIの開発や管理、データ分析など、新たなスキルが求められる職業が生まれ、新たな雇用機会も創出されます。
- 教育の変革: AI時代に必要なスキルを習得するための教育改革が求められます。創造性、問題解決能力、人間関係構築能力などが重視されるようになるでしょう。
量子コンピューティングの実用化
量子コンピュータは、従来のコンピュータでは不可能な計算を高速に行うことができ、様々な分野に革新をもたらすと期待されています。
- 新素材開発: 新しい材料の開発を加速させ、より効率的なエネルギー源や耐久性の高い素材を生み出すことが期待されます。
- 医薬品開発: 新薬の開発期間を短縮し、より効果的な治療法の開発に貢献することが期待されます。
- AIの発展: AIの学習能力を飛躍的に向上させ、より高度なAIの開発が可能になります。
- セキュリティ脅威: 量子コンピュータは、現在の暗号化技術を簡単に破ることができ、新たなセキュリティ脅威となる可能性もあります。
気候変動による不可逆的な影響
気候変動は、世界中で深刻な問題となっており、その影響はますます大きくなると予想されます。
- 異常気象の頻発: 熱波、豪雨、干ばつなどの異常気象が頻発し、農業やインフラに大きなダメージを与える可能性があります。
- 海面上昇: 海面上昇により、沿岸地域の浸水や島国の消滅などのリスクが高まります。
- 生物多様性の損失: 気候変動は、生態系に大きな影響を与え、生物多様性の損失を加速させる可能性があります。
- 食料危機: 農業生産への影響により、食料価格の高騰や食料不足が発生する可能性があります。
新たな資源戦争
資源の枯渇や新たな資源の発見、地政学的な緊張の高まりなどにより、資源をめぐる争いが激化する可能性があります。
- レアアース争奪戦: スマートフォンや電気自動車など、様々な製品に利用されるレアアースの供給が不安定になることで、各国間の競争が激化する可能性があります。
- 水資源の争奪戦: 水不足に悩む地域では、水資源をめぐる紛争が発生する可能性があります。
- エネルギー源の争奪戦: 化石燃料の枯渇に伴い、再生可能エネルギーや新たなエネルギー源の開発競争が激化します。
4. まとめ
VUCAの時代は、企業にとって大きな挑戦であり、同時に新たな成長機会でもあります。VUCAの時代を生き抜くためには、企業は上記の7つの力を身につけ、変化を恐れずに新しいビジネスモデルを創出し、社会の課題解決に貢献していく必要があります。
本記事が、VUCAの時代を生き抜くためのヒントになれば幸いです。
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