2025年|観光事業の災害対策に使える補助金を解説

地震・火災・水害など、いつでも起こりうる災害と隣り合わせの日本。インバウンド需要の増加に伴い、観光客の安全・安心の確保が課題となっています。
「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」は、訪日外国人旅行者が安心して日本各地を訪れることができる旅行環境の整備費用を支援する観光庁の補助金制度です。
ー目次ー
1.地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業とは
「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」は、訪日外国人旅行者が安心して旅行できる環境整備を目的とし、一定の体制が整う地域や意欲ある地域において、災害や急病などの非常時における安全・安心対策を推進する為の観光庁の事業です。
災害や急病等の非常時において、訪日客が安心して避難できる環境を整備するため、観光施設等における避難所機能の強化(非常用電源、災害用トイレ等)や多言語対応機能の強化(多言語対応AED等)に必要な費用の支援を受けることが出来ます。
補助内容
この補助金は、訪日外国人旅行者が日本を安心して旅行できる環境を整備するため、以下の4つの主要なメニューで構成されています。
①災害時の観光施設等における避難所機能の強化
災害発生時において、訪日外国人旅行者が一時的に安全を確保できる場所を提供するため、観光施設等の避難所としての機能を強化することを目的としています。
避難所機能の強化のための整備に要する経費(例:非常用電源装置、災害用トイレの整備・増改築(新築は除く)、避難スペース、備蓄倉庫等)の一部が補助されます。難所機能の強化においては、「災害発生時に避難のため当該施設を利用すること」について、施設の所在する市区町村等と当該施設の間で調整がなされている必要があります。
②災害時の観光施設等における多言語対応機能の強化
災害発生時において、訪日外国人旅行者に対して適切な情報提供や避難誘導を行うため、観光施設等の多言語対応機能を強化することを目的としています。
多言語対応機能強化のための整備に要する経費(例:多言語対応AEDの整備、多言語表示・案内ツールの導入、Wi-Fi環境の整備等)の一部が補助されます。多言語機能強化においては、「災害発生時の当該施設利用者の避難・誘導対応」について、施設の所在する市区町村等と当該施設の間で調整がなされている必要があります。
③訪日外国人患者受入機能の強化
訪日外国人旅行者が医療機関を受診する際の利便性を向上させることを目的としています。
訪日外国人患者受入機能強化のための整備に要する経費(例:キャッシュレス決済端末の導入、医療機関内の多言語対応化、問診票等の多言語化)が一部補助されます。補助を受けるためには、「外国人患者を受け入れる医療機関の情報を取りまとめたリスト」への登録が要件となります。登録は都道府県を通じて申請し、年2回(6月と12月)更新されます。
④災害時等における観光危機管理の強化
各地域における訪日外国人旅行者を含む観光客に対する災害時の対応方針等の計画策定や訓練実施を支援し、地域全体の観光危機管理体制を強化することを目的としています。
災害時等における観光危機管理の強化のために要する経費(観光危機管理計画の策定、観光危機管理計画に基づく訓練の実施など)が一部補助されます。対象事業者: 地方公共団体です。
補助対象事業者
「地域における受入環境整備促進事業補助金(インバウンド安全・安心対策推進事業)」における補助対象事業者は、以下の通りです。
①災害時の観光施設等における避難所機能の強化
- 観光案内所・観光施設等を設置し、若しくは管理する者
- 観光地における店舗・事業所等を運営する者
②災害時の観光施設等における多言語対応機能の強化
- 観光案内所・観光施設等を設置し、若しくは管理する者
- 観光地における店舗・事業所等を運営する者
③訪日外国人患者受入機能の強化
- 病院・診療所等を設置し、又は管理する者
④災害時等における観光危機管理の強化
- 地方公共団体
補助額と補助率
①災害時の観光施設等における避難所機能の強化
- 補助率:補助対象経費の2分の1以内
②災害時の観光施設等における多言語対応機能の強化
- 補助率:補助対象経費の2分の1以内
③訪日外国人患者受入機能の強化
- 補助率:補助対象経費の2分の1以内
④災害時等における観光危機管理の強化
- 補助率:補助対象経費の2分の1以内
- 補助額の上限:500万円
2.受給までの流れ
Step1. 事業計画書の提出
まず、補助対象事業者(地方公共団体・民間事業者等)は、指定された様式の事業計画書を作成し、提出します。
提出方法は原則として電子データによる電子メールでの提出となりますが、事前に提出先(各地方運輸局等)への連絡が必要です。※鉄道・自動車・海事・港湾に関する公共交通事業者等は、電子申請システム「jGrants」での申請手続きの対象外となるため、別途問い合わせが必要です。
同一の設置主体が複数の補助対象施設等について応募を希望する場合は、補助対象施設等ごとに事業計画書を作成する必要があります。民間事業者の場合は、施設が所在する地方公共団体からの意見書の提出が必須です。
Step2. 審査結果の通知(内示)
提出された事業計画書に基づいて、観光庁または地方運輸局等による審査が行われます。
原則として、応募月の翌月末を目処に審査結果が伝えられます。※予算がなくなり次第、予告なく募集が終了する場合があります。
Step3. 交付申請書の提出
審査の結果、採択された場合、補助金の交付を受けるために交付申請書を提出する必要があります。
交付申請は、原則として電子申請システム「jGrants」で行います。jGrantsの利用には、事前にGビズIDプライムの取得が必要となります。
発行には通常2~3週間を要するため、活用を考えている場合は事前にIDを取得することが推奨されています。※交付申請書の作成にあたっては、消費税及び地方消費税額等仕入控除税額を減額して記載する必要があります。
Step4. 交付決定通知書の受領
提出された交付申請書の内容が精査された後、補助金の交付決定通知書が交付予定額とともに通知されます。
交付決定通知書に記載された補助金交付決定額は、応募時の申請額より減額となる場合があることに留意が必要です。交付決定後、補助対象事業に関する契約・発注を行うことになります。※交付決定前に契約・発注した経費は補助対象となりません。
Step5. 事業実施
交付決定に基づき、事業計画に沿って補助事業を実施します。事業の内容や金額に変更が生じると判明した場合は、速やかに事業を中断し、各運輸局等に相談する必要があります。
必要に応じて、国土交通省・地方運輸局等による進捗状況の確認が行われる場合があります。
Step6. 完了実績報告書の提出
補助事業が完了したら、完了日から1ヶ月を経過した日または定められた期間までに、完了実績報告書を提出する必要があります。
期限までに適切な完了実績報告書が提出されない場合、補助金が交付されないため、注意が必要です。
完了実績報告書提出時には、機器設置前後の写真、契約書や請求書等、実際に要した経費がわかる資料およびその内訳等の添付が必要です。
Step7. 補助金の額の確定通知書の受領
提出された完了実績報告書に基づき、実施された事業内容の検査と経費内容の確認が行われ、交付すべき補助金の額が確定し、「補助金の額の確定通知書」により通知されます。
Step8. 支払請求書の提出
補助金の額の確定通知を受けたら、支払請求書を提出します。
Step9. 補助金の支払い
支払請求書に基づき、補助金が支払われます。
補助金の支払いまでには、完了実績報告書の提出後2~3ヶ月程度かかる場合があります。補助金は経理上、交付を受けた事業年度における収益として計上され、法人税等の課税対象となります。
3.「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」採択のためのポイント
「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」で採択を勝ち取るににあたり、非常に重要な「事業計画」作成の際は以下のポイントを抑えましょう。
✅事業の目的の理解を高める
まず、本補助金が「訪日外国人旅行者が我が国を安心して旅行できる環境を整備する」ために、災害、急病等の非常時における訪日外国人旅行者の安全・安心対策を推進することを目的としている点を明確に理解することが重要です。4つの補助内容の中で、申請する事業がどのメニューに該当し、どのような整備や対策が補助対象となるのかを正確に把握する必要があります。
✅立地要件を満たしているかを見極める
補助対象となる地域は、「訪日外国人旅行者の受入れに関し一定の体制を整えている地域又は訪日外国人旅行者の誘致等、観光振興に意欲を有する地域」とされています。以下の地域における事業は優先的に採択されるため、該当する場合は積極的にアピールすることが重要です。
- 「非常時における外国人旅行者の安全・安心の確保に向けた指針」に基づき観光危機管理計画を策定した地域。
- 「地域防災計画」等において訪日外国人旅行者の避難計画等を定めた地域。
- 日本政府観光局により、上位のカテゴリーに認定されている又は認定の見込みがある観光案内所を補助対象とする事業。
✅訪日外国人旅行者の受入実績・見込みを正確に算出する
補助対象施設等における旅行者の年間総入込数を、2024年または2024年度の実績に基づいて記載する必要があります。合理的な方法で訪日外国人旅行者の割合を算出し、説明できるようにしておくことが重要です。
✅事業計画に具体性を持たせる
どのような対策を実施し、それによってどのように訪日外国人旅行者の安全・安心に貢献するのか、具体的な内容を事業計画書に記載する必要があります。非常用電源装置や多言語対応AEDの整備、多言語表示の強化、キャッシュレス決済の導入など、計画する内容が本事業の目的に合致しているか明確に記述しましょう。
4.観光事業者が災害・安全対策を講じるメリットとは
観光事業者にとって、災害・安全対策を講じることは、顧客の安心感を高めるだけでなく、事業の持続可能性や収益性を向上させる重要な取り組みです。
特に災害リスクが顕在化している現代において、万全な安全対策は競争優位性を確立する要素にもなります。ここでは、経営的視点から見た3つの主要なメリットをご紹介します。
経営リスクの低減
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災害対策を整備することで、被害を最小限に抑えられ、施設の復旧にかかる費用や営業停止期間を短縮できます。
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事前にリスクマネジメントを行うことで、突発的な損失を抑制し、財務の安定性を確保できます。
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災害保険への加入条件が有利になったり、保険料が低減されるケースもあります。
顧客・地域からの信頼獲得
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安全対策を公表し、顧客に安心して利用してもらうことで、顧客満足度やリピート率が向上します。
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災害時の迅速な対応体制を示すことで、信頼性の高い観光施設としてブランド価値を高めることが可能です。
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地域と連携した防災活動に取り組むことで、地域コミュニティからの支持を得やすくなります。
補助金・助成金の活用とコスト削減
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国や自治体が提供する災害対策関連の補助金や助成金を活用し、初期投資を抑えながら安全対策を強化できます。
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安全対策が評価されることで、金融機関からの融資を受けやすくなる場合もあります。
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万が一の災害時にも、事業継続計画(BCP)を策定しておくことで、復旧の迅速化と収益の回復を支援します。
5.補助金申請のご相談なら「Jコンサルへ」
非常時の避難体制の強化、多言語対応の推進、外国人患者の受入体制の整備などを検討されている観光事業者の皆さまに、ぜひ活用してほしい「地方誘客促進に向けたインバウンド安全・安心対策推進事業」をご紹介しました。
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