リモートワークの課題は生産性の低下防止|対策&成功事例

新型コロナウイルス感染症の拡大を機に急速に普及したリモートワーク。働き方の多様化をもたらし、生産性向上に期待が集まる一方で、コミュニケーション不足やモチベーション低下など、課題も指摘されています。
本記事では、リモートワークの生産性向上に影響を与える要因を深掘りし、企業、管理者、個人が取り組むべき施策を具体的にご紹介します。
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ー目次ー
1. 2025年のリモートワーク事情
2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、働き方は大きく変容し、リモートワークが急速に普及しましたが、リモートワークの導入には生産性の低下やコミュニケーション不足といった課題も浮上しています。
「オフィスでの対面の方がコミュニケーションの方が円滑・マネジメントがしやすい」「リモートワーク従業員のモチベーション維持が難しい」などの課題として挙げられる一方で、育児・介護休業法の改定案では、2025年4月から、3歳までの子供を持つ親や介護を担う従業員がリモートワークを利用できるよう企業に努力義務が課されることとなるなど、引き続き企業は従業員の状況や業務内容に応じて、柔軟な働き方を導入することが求められています。厚生労働省|育児・介護休業法 改正ポイントのご案内
2. リモートで生産性が低下する?その要因は?
2024年に実施された20歳以上の雇用者向け調査では「リモートワークによって仕事効率が向上した」という意見が最も多く、「効率が上がった」「やや上がった」と回答した人の合計は78.9%で過去最高を記録しました。出典|第15回働人の意識に関する調査
一方で、マサチューセッツ工科大学(MIT)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究によると、完全在宅勤務の場合の生産性は、オフィス勤務より18%低いことが明らかになるなど、リモートワークの是非を問うデータは様々です。出典|ブルームバーグ
多様な働き方を推進したい厚生労働省の方針や、リモートワークの恩恵を受ける労働者が多くいる一方で、企業にとっては見過ごせない生産性の低下はなぜ起こるのでしょうか?
生産性低下の主な要因
リモートワークは、働き方の多様化を促進し、生産性向上に繋がる可能性を秘めています。しかし、一方で、コミュニケーション不足、労働時間増加、モチベーション低下など、生産性を阻害する要因も存在します。
コミュニケーション不足
リモートワークでは、対面でのコミュニケーションが減少し、情報共有や協力が難しくなることがあります。
非同期コミュニケーションの増加や、画面越しでは表情や声のトーンが伝わりにくかったり、日常的な雑談などの機会が減ってしまう事が要因として挙げられます。
定期的なオンライン会議の実施やチャットツールやプロジェクト管理ツールの活用、水平的な関係構築のための取り組みなど、従業員同士のコミュニケーションの場を積極的に設ける必要があります。
「さぼり」または「長時間労働」
リモートワークでは、仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、さぼりや長時間労働に繋がりやすい傾向があります。
家の中で仕事をするためオンオフの切り替えが難しいため、集中力を欠いてしまったり、逆に休憩時間の取り忘れるなど際限なく仕事をしてしまう場合や、残業時間の把握が難しいことなどが課題です。
働く環境の整備不足(設備、IT環境)
自宅での作業環境は、集中力や生産性に大きく影響します。適切なデスクや椅子がない、騒音や光の影響、インターネット環境が不安定など、仕事に集中するための環境整備が行われていない自宅での作業は、生産性低下につながってしまいます。
リモートワークに適した環境が整っているかの確認や、在宅勤務手当の支給などの検討が必要です。
孤独感や孤立感
リモートワークでは、同僚との交流が減少することから孤独感や孤立感を覚えやすく、目的意識の喪失やモチベーション低下が生産性に影響してしまうことがあります。
水平的な関係構築の機会が少ない、相談できる相手がいないなどの状況を避け、チームビルディング活動の実施や個別目標の設定と進捗管理を上司のフィードバックを交えて行う必要性が高く、常に相談しやすい関係づくりも重要です。
労務管理や評価制度の課題
リモートワークでは、従来の労務管理や評価制度が必ずしも有効とは限りません。従業員の働き方を客観的に評価しにくく、モチベーションに繋がる評価基準が不明確であるという課題もあります。
成果に基づいた評価制度の導入や従業員の成長を支援する制度の整備など、リモートワークという新しい働き方に沿った評価基準を見直す必要性があります。
3. リモートワークの生産性を高めるカギは「業務の見える化」
「業務の見える化」とは、企業の業務プロセスや進捗状況などを可視化し、一目でわかるようにすることです。暗黙知として個人に蓄積されていた情報を共有し、組織全体の透明性を高めることで、業務効率の向上や生産性の向上を目指します。
リモートワークを成功させるためには、一人一人の従業員の業務内容や進捗度合いをしっかりと見える化するが特に重要なカギとなります。
業務の進捗状況をリアルタイムで把握し、遅延を防げたり、担当者間の連携を強化し、スムーズな業務遂行を促したり、各個人の目標達成度を可視化し、モチベーション向上に繋げることが出来ます。
4. リモートワークにおける生産性向上のための施策
リモートワークの成功は、企業、管理者、個人のそれぞれの努力が不可欠です。これらの施策を組み合わせることで、より効果的に生産性を向上させることができます。
企業ができる施策
✅ITツールの導入と活用
- コミュニケーションツール: チャットツール、ビデオ会議システム、プロジェクト管理ツールなどを導入し、円滑なコミュニケーションを促進します。
- 情報共有ツール: クラウドストレージやグループウェアなどを活用し、情報の一元化と共有を図ります。
- 勤怠管理システム: リモートワーク中の勤務時間を正確に把握し、労務管理を効率化します。
✅働く環境の整備(設備、IT環境)
- 在宅勤務手当の支給: 従業員が自宅で快適に働けるよう、オフィス家具や通信費の一部を補助します。
- IT環境の整備: 高速インターネット回線、セキュリティ対策の徹底など、安定した作業環境を提供します。
- セキュリティ対策: 情報漏洩防止のための教育や、セキュリティソフトウェアの導入を行います。
✅労務管理と評価制度の見直し
- フレックスタイム制の導入: 従業員が自分のライフスタイルに合わせて働けるようにします。
- 成果主義への転換: 業務の成果を評価し、モチベーション向上に繋げます。
- 定期的な面談の実施: 従業員の状況を把握し、必要なサポートを提供します。
管理者ができる施策
✅意識的なコミュニケーションの促進
- 定期的なオンラインミーティング: チーム全体の状況を共有し、コミュニケーションを活発化させます。
- 1on1ミーティング: 個々の従業員の状況を把握し、目標設定や課題解決を支援します。
- 非同期コミュニケーションの活用: チャットツールなどを活用し、いつでもどこでも情報交換できるようにします。
✅チームの結束力向上施策
- オンラインチームビルディング: バーチャルなイベントやゲームを通じて、チームの一体感を高めます。
- 共通の目標設定: チーム全体で達成したい目標を設定し、モチベーションを高めます。
- ピアレビューの導入: 同僚同士で互いの成果を評価し、学び合いを促進します。
✅目標設定と進捗管理
- SMARTな目標設定: 具体的な、測定可能な、達成可能な、関連性の高い、時間限定の目標を設定します。
- 進捗状況の定期的な共有: 進捗状況を可視化し、チーム全体で目標達成に向けて取り組めるようにします。
個人ができる施策
✅自己管理能力の向上
- 時間管理: 時間割を作成し、タスクを優先順位をつけて実行します。
- 集中力向上: ポモドーロテクニックなど、集中力を高めるための手法を取り入れます。
- 自己学習: 新しいスキルを習得し、自己成長を目指します。
✅働く環境の整備
- 専用のワークスペース: 仕事に集中できる静かな場所を確保し、体に負担をかけない椅子やデスクを使用しましょう。
- 健康管理: 定期的な運動や栄養バランスの取れた食事を心掛けます。
✅モチベーション維持
- 小さな目標を設定: 短期的な目標を達成することで、モチベーションを維持します。
- 趣味の時間を作る: リフレッシュすることで、仕事への意欲を高めます。
- キャリアアップを目指せる環境づくり: 将来のキャリアパスを考え、自己成長を促します。
5. リモートワークで生産性向上に成功した事例紹介
リモートワーク導入後の生産性向上に苦心している一方で、リモートワークの質を向上させ、働きやすい環境の整備で優秀な人材の確保に成功している企業もあります。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社は、「一人ひとりが自分らしくいきいきと活躍できるよう、多様なマッチングを実現する人事制度」を掲げリモートワーク環境手当や週に1回程度任意で回答できるサーベイを用意して、リモートワーク導入による従業員のモチベーションアップや生産性向上への取り組みを実施しています。
同社は、自社で開発したグループウェア「kintone」などのITツールを活用し、コミュニケーションや業務の可視化を徹底したり、リモートワークを支えるチームの設置や、コミュニケーションを円滑に進めるための風土づくりを提唱するなどして、企業全体でリモートワークの質の向上を目指しています。
6. まとめ
リモートワークは、生産性向上に繋がる可能性を秘めた働き方ですが、コミュニケーション不足やモチベーション低下など、様々な課題も存在します。
リモートワークの生産性向上に影響を与える要因として、コミュニケーション不足、労働時間増加、モチベーション低下、働く環境の整備不足、孤独感や孤立感、労務管理や評価制度の課題などの課題を解決するためには、ITツールの導入、働く環境の整備、労務管理の見直し、目標設定と進捗管理など、企業、管理者、個人がそれぞれ取り組むべき施策が重要です。
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